特養の経営が厳しい理由とは?介護人材・物価高騰への対応と事業継続のポイント

特別養護老人ホーム(特養)を取り巻く経営環境が厳しくなっています。食材費や光熱水費、修繕費、人件費などのコストが上昇する一方、介護報酬は自由に価格を設定できないため、施設側の経営努力だけでは対応が難しい状況です。

独立行政法人福祉医療機構(WAM)の2024年度調査では、赤字となった施設の割合は従来型特養で45.2%、ユニット型で31.5%となりました。従来型では前年度から3.1ポイント上昇しており、特養の経営難が続いていることが分かります。

特養の経営を圧迫する「物価高騰」と「人件費」

特養では、食事の提供や空調、入浴設備など、日々の運営に多くのコストが発生します。特に近年は食材費や電気・ガス料金の上昇に加え、介護職員の確保に必要な賃金の引き上げも経営上の負担となっています。

さらに、介護施設ではサービスの価格を自由に変更できません。そのため、物価や人件費が上昇しても、その増加分をそのまま利用料金へ反映することは難しいのが実情です。

厚生労働省も介護報酬改定において、介護人材の確保や働きやすい職場づくり、制度の持続可能性などを重要な課題として位置付けています。

建物や人材を「共有資源」として活用する

こうした環境の中で重要になるのが、施設がすでに持っている建物・設備・人材を最大限に活用する視点です。

例えば、特養に保育所を併設すれば、給食設備などを共有できるほか、子育て中の介護職員が働きやすい環境づくりにもつながります。育児と仕事を両立しやすくなれば、職員の定着率向上や採用コストの抑制も期待できます。

また、介護事業所単体で考えるのではなく、法人内の複数事業所で人材や設備を共有する方法もあります。保育、障害福祉、介護など、地域のニーズに合わせて事業間の連携を進めることが選択肢となるでしょう。

「採用」だけでなく「定着」と「生産性」を考える

介護人材不足への対応では、新たな人材を採用するだけでは十分ではありません。

採用した職員が長く働ける環境を整え、離職を防ぐことも重要です。業務内容の見直し、ICTの活用、職員配置の最適化、子育てや介護との両立支援など、働き続けやすい仕組みを整える必要があります。

また、利用率や加算の取得状況、人件費率、経費率などを定期的に確認し、「どこで利益が生まれ、どこでコストが発生しているのか」を把握することも欠かせません。WAMの調査でも、施設によって利用率や加算の算定状況などに差がみられています。

特養の事業継続には「経営」と「介護」の両立が必要

特養は、介護を必要とする高齢者にとって重要な生活基盤です。そのため、経営改善を単なるコスト削減として捉えるのではなく、必要なケアを継続するための仕組みとして考えることが求められます。

今後は、施設単体の収支改善だけでなく、法人内の資源共有、地域との連携、人材の定着、業務効率化などを組み合わせた経営戦略が重要になります。

「人を減らしてコストを下げる」のではなく、「限られた人材と資源をどう活かすか」を考えることが、これからの介護経営における重要なテーマになるでしょう。

出典

・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
・厚生労働省「介護報酬」
・独立行政法人福祉医療機構(WAM)「2024年度 特別養護老人ホームの経営状況について」