2026年上半期、医療機関の倒産が増加

「後継者難」は過去最多に!医療機関が今考えるべき経営・組織課題
2026年上半期(1~6月)、病院・クリニック・歯科医院などの「医療機関」の倒産件数が38件に達しました。
前年同期の33件から15.1%増加し、2006年以降の上半期では、2009年の39件に次ぐ2番目の高水準です。
今回の調査で特に気になるのが、「後継者難」による倒産が11件に達したことです。
医療機関の経営環境が厳しくなるなか、単なる資金繰りだけではなく、経営を誰が引き継ぐのか、そして組織をどう維持していくのかという問題が表面化しています。
2026年上半期の医療機関倒産は38件
2026年上半期に倒産した医療機関は38件でした。
前年同期の33件から5件増え、増加率は15.1%です。
過去の推移を見ると、コロナ禍の2020年上半期は11件まで減少していましたが、その後は増加傾向が続いています。
- 2024年上半期:33件
- 2025年上半期:33件
- 2026年上半期:38件
38件という数字だけを見ると、一つひとつの医療機関の状況までは分かりません。
ただ、コロナ禍による支援が一巡した後も倒産件数が増えていることを考えると、医療機関を取り巻く経営環境そのものが変化していると見る必要があります。
増加が目立つのはクリニックと歯科医院
業態別では、病院の倒産が減少した一方、クリニックと歯科医院では前年同期を上回りました。
| 業態 | 2025年上半期 | 2026年上半期 |
|---|---|---|
| 病院 | 8件 | 4件 |
| クリニック | 13件 | 19件 |
| 歯科医院 | 12件 | 15件 |
| 合計 | 33件 | 38件 |
なかでもクリニックは19件となり、過去20年間の上半期で最多を更新しています。
大規模な病院だけの問題ではなく、地域で日常的な診療を担っているクリニックにも経営上の負担が広がっていることが、この数字からも見て取れます。
倒産原因の約6割を「販売不振」が占める
原因別では、「販売不振」が22件で最も多く、全体の57.8%を占めました。
次いで「既往のシワ寄せ」が8件、21.0%となっています。
この2つを合わせると約8割です。
医療機関の場合、「販売不振」という言葉だけでは少し分かりにくいかもしれません。
背景には、人口減少や患者数の変化などによって収益を確保しにくくなる一方、人件費や光熱費、医療材料などのコストが上昇するといった事情があります。
これまでと同じ患者数を維持していても、以前と同じように利益を確保できるとは限りません。
経営者にとっては、収益面だけでなく、固定費や人員配置まで含めて事業全体を見直す必要がある局面です。
「後継者難」は過去最多の11件
今回の調査でもう一つ見逃せないのが、後継者問題です。
2026年上半期の医療機関における「後継者難」倒産は11件。
上半期として過去最多となり、全38件の28.9%を占めました。
およそ3件に1件が「後継者難」に関係している計算です。
一方、2026年上半期の全倒産に占める「後継者難」倒産は4.9%でした。
医療機関では、一般企業とは異なり、資格や診療体制などの事情も絡みます。
そのため、経営者が高齢になってから急いで後継者を探すという方法では、選択肢が限られてしまう可能性があります。
「まだ先の話」と考えている医療機関ほど、早い段階から準備しておくことが経営の安定につながります。
経営課題の裏側には「人」の問題もある
医療機関の経営について考える際、患者数や診療報酬、コストといった数字に目が向きやすくなります。
一方で、実際の現場を支えているのは職員です。
人材を確保できなければ、診療体制そのものが維持できません。
採用が難しい状態が続けば、現在働いている職員に負担が集中します。
その結果、残業や業務負担が増え、職員の疲弊や離職につながることもあります。
そして職員が離職すると、さらに採用が難しくなる。
医療機関では、このような悪循環が起こりやすい状況にあります。
採用の問題を「求人を出して応募者を待つ」という話だけで終わらせることが難しくなっている理由の一つです。
「採用できない」の前に確認したいこと
人材が集まらない医療機関から相談を受けると、「最近は人が来ない」「求人を出しても応募がない」という話から始まることがあります。
もちろん、地域の労働市場や職種そのものの人材不足が原因となっているケースもあります。
ただ、それだけでは説明できないケースも少なくありません。
例えば、次のような点です。
- 求人票を見ても仕事内容が具体的に分からない
- 他の医療機関との違いが伝わっていない
- 面接までの連絡が遅い
- 面接で仕事内容や職場の雰囲気を十分に伝えられていない
- 入職後の教育体制が整理されていない
- 特定の職員に業務が偏っている
- 管理職が採用や育成まで抱え込んでいる
こうした部分を一つずつ確認すると、「採用市場が厳しいから仕方がない」と考えていた問題の中に、自院側で改善できる部分が見つかることがあります。
採用人数だけを追わない
採用活動では、「今年何人採用するか」という目標が設定されることが多いと思います。
もちろん、採用人数は重要です。
しかし、採用した人が短期間で退職してしまえば、また同じ採用活動を繰り返すことになります。
そのたびに求人費用や紹介手数料が発生し、面接や教育を担当する職員の負担も増えていきます。
だからこそ、
採用する。
→ 入職してもらう
→ 職場に馴染んでもらう
→ 長く働いてもらう
→ 次の人材を育てる
というところまで、一つの流れとして考えることが大切です。
採用と定着は別々のテーマに見えて、実際にはつながっています。
後継者問題も「人材」の問題
後継者についても同じことが言えます。
後継者は、経営者が引退するときに突然現れるものではありません。
日々の診療や組織運営を通じて、少しずつ経営を担える人材を育てていく必要があります。
経営判断を経験する機会をつくる。
管理職として人をまとめる経験を積んでもらう。
採用や人材育成にも関わってもらう。
こうした経験の積み重ねが、将来の事業承継につながっていきます。
「誰に引き継ぐか」だけではなく、「誰が引き継げる状態になっているか」という視点も欠かせません。
医療機関が今できること
今回の倒産件数だけを見て、すべての医療機関が危機的な状況にあると判断することはできません。
一方で、経営環境の変化や人材不足、後継者問題が同時に進んでいることは、今回のデータから読み取れます。
だからこそ、経営に大きな問題が出てから動くのではなく、現在の状態を一度整理しておくことをおすすめします。
例えば、次の5点です。
1.採用状況を数字で確認する
応募数、面接数、採用数、辞退数、入職後の定着状況を確認します。
2.求人内容を見直す
求職者から見て、「ここで働く理由」が求人情報から伝わるかを確認します。
3.職員の負担を確認する
特定の職員に業務が集中していないか、管理職が抱え込みすぎていないかを確認します。
4.定着状況を確認する
退職者数だけでなく、「なぜ辞めたのか」「どの段階で辞めているのか」を整理します。
5.将来の人材を考える
管理職候補や次世代の経営を担う人材がいるか、その人材を育てる環境があるかを確認します。
医療機関の経営を支えるのは、最終的には「人」
医療機関の経営環境は、これからも変化していくことが予想されます。
患者数、コスト、診療体制、採用、定着、事業承継。
これらは別々の問題ではありません。
一つの問題が、別の問題を引き起こすこともあります。
例えば、採用難によって職員の負担が増え、それが離職につながり、さらに採用が難しくなる。
経営者への負担が大きくなれば、後継者育成に時間を割けなくなることもあります。
こうした状況を考えると、医療機関の経営を考えるうえで「人」の問題を後回しにすることはできません。
当社では、医療・介護・福祉領域を中心に、採用支援だけでなく、採用広報、職員の定着、組織改善などを含めた支援を行っています。
採用人数を増やすことだけを目的とするのではなく、
「なぜ人が集まらないのか」
「なぜ定着しないのか」
「この組織を次の世代にどうつないでいくのか」
というところから、現状を整理していきます。
医療機関を取り巻く環境が変化する今だからこそ、自院の経営と組織について、一度立ち止まって考える時間をつくってみてはいかがでしょうか。
出典
東京商工リサーチ「2026年上半期『医療機関』倒産 増勢続く 上半期で2番目の38件、『後継者難』は最多」
東京商工リサーチ「2026年上半期『後継者難』倒産 過去最多の264件」
※本記事は上記調査をもとに、医療機関の採用・組織課題という観点を加えて再構成したものです
※東京商工リサーチの調査は、日本標準産業分類の「病院」「一般診療所」「歯科診療所」を対象に、2026年上半期(1~6月)の負債1,000万円以上の倒産を集計・分析したものです


