仕事のストレスによる精神障害の労災認定が1,086件!ハラスメント対策と職場環境改善が課題に

仕事による強いストレスなどを原因とする精神障害について、労災認定の増加が続いています。厚生労働省が2026年7月に公表した「令和7年度 過労死等の労災補償状況」では、精神障害に関する労災の支給決定件数が、業務災害と複数業務要因災害を合わせて1,086件となりました。
職場におけるメンタルヘルス対策やハラスメント防止は、従業員を守るだけでなく、離職防止や人材確保にも直結する経営課題になっています。
精神障害の労災認定は過去最多水準
厚生労働省によると、2025年度の業務災害に関する精神障害の労災支給決定件数は1,082件で、前年度から26件増加しました。うち自殺・自殺未遂は76件です。
さらに、複数の勤務先における業務負荷を総合的に評価する「複数業務要因災害」では4件の支給決定があり、合計すると1,086件となります。
認定された事案では、職場での人間関係やハラスメントなど、心理的な負担につながる出来事が大きな割合を占めています。
パワハラ・カスハラ・セクハラが主な要因に
精神障害の支給決定事案を出来事別に見ると、「上司等からパワーハラスメントを受けた」が222件で最多でした。
続いて、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が127件、「セクシュアルハラスメントを受けた」も127件となっています。仕事内容や仕事量の大きな変化による事案も113件ありました。
この結果からも、従業員個人のストレス耐性だけに問題を求めるのではなく、業務量、上司との関係、顧客対応、組織風土などを含めて職場環境を見直すことが重要だと分かります。
医療・介護・福祉業界も重点的な対策が必要
業種別では、「医療、福祉」における精神障害の支給決定が292件と最多でした。その中でも「社会保険・社会福祉・介護事業」は151件となっています。
医療・介護・福祉の現場では、慢性的な人材不足に加え、利用者・家族への対応や職員間の連携など、心理的負担が生じやすい場面があります。
人材採用を強化するだけでは、職場環境そのものが改善されなければ離職防止につながりません。採用と定着を別々の課題として扱うのではなく、働き続けられる組織づくりまで一体的に考える必要があります。
ハラスメント対策は「相談できる仕組み」から
厚生労働省は、精神障害の労災認定基準においてパワーハラスメントなどを明確に位置付けています。企業には、ハラスメントを防止するだけでなく、問題が発生した際に相談・対応できる体制を整えることが求められます。
重要なのは、制度を設置するだけで終わらせないことです。
「相談しても不利益を受けない」「上司に直接言わなくても相談できる」「問題を早期に把握できる」といった安心感がなければ、制度は十分に機能しません。
職員アンケートや第三者相談窓口などを活用し、現場の声を定期的に把握することも有効です。小さな変化を早期に発見できれば、離職やメンタル不調につながる前に対応できる可能性があります。
人材確保には「働き続けられる職場」が欠かせない
人手不足が続く中、企業や医療・介護事業者に求められているのは、採用人数を増やすことだけではありません。
「採用する → 定着する → 職員が安心して働く → 組織の魅力が高まる」という循環をつくることが重要です
そのためには、ハラスメント対策、業務負担の見直し、職員間のコミュニケーション改善、相談体制の整備などを継続的に進める必要があります。
人材不足への対応は、採用活動だけでは解決できません。これからの組織づくりでは、「人を採る」だけでなく「人が辞めにくい仕組みをつくる」ことが重要なテーマとなります。
出典
・厚生労働省「令和7年度『過労死等の労災補償状況』」
・厚生労働省「精神障害の労災補償について」


